TOP-HAT News 第208号(2025年12月)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)
第208号(2025年12月)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html で。
エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部
◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに UNAIDS 30年後の「落日」とは
2. 『崩壊の危機を乗り越え エイズ対策の変革を』
3 113億4100万ドルの拠出誓約 南アフリカでグローバルファンド第8次増資サミット
4 シミック賞にぷれいす東京の生島さん 日本エイズ学会
◇◆◇◆◇◆
1 はじめに UNAIDS 30年後の「落日」とは
12月1日の世界エイズデーは1988年に制定されました。厚労省のAPI-Net(エイズ予防情報ネット)は次のように説明しています。
《1988年にWHO(世界保健機関)が12月1日を“World AIDS Day”(世界エイズデー)と定め、エイズに関する啓発活動等の実施を提唱しました。その後1996年からUNAIDS(国連合同エイズ計画)もこの活動を継承しています。日本でもその趣旨に賛同し、エイズに関する正しい知識等についての啓発活動を推進し、エイズまん延防止及び患者・感染者に対する差別・偏見の解消等を図ることを目的として、12月1日を中心に「世界エイズデー」を実施しています》
1996年はUNAIDSが実質的な活動を開始した年です。複数の国連機関が共同スポンサーとして運営に関与する合同プログラムとして創設が認められた新しいタイプの国連機関でした。事務局の肥大化を避け、より多くの資金を実質的な活動に回すことを目指す組織形態です。
発足当時の共同スポンサーはWHOとUNDP(国連開発計画)、UNICEF(国連児童基金)、UNFPA(国連人口基金)、UNESCO(国連教育科学文化機関)に世界銀行を含めた6機関でした。その後もILO(国際労働機関)やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、UN Women(国連女性機関)などが加わり、現在は11機関がスポンサーとなっています。
保健分野だけでなく、開発、労働、教育、女性および子供の権利など幅広い分野の機関が加わっているのは、エイズのパンデミックが国際社会にもたらした影響がそれだけ深刻で重大なことを表している・・・はずでした。
そのUNAIDSがいま、創設から30年を経て、落日を迎えつつあると指摘されています。
10月のTOP HAT News第106号でも「UNAIDSはどう変わるのか」の見出しで紹介しましたが、今年秋にグテーレス国連事務総長が公表した国連80周年改革案の進捗状況に関する報告書では6項目の国連機関合併・統合案が示されました。その一つがUNAIDSのSunset(落日)です。
統合や合併ではなく、「落日」となっているのは、11もの機関による合同プログラムだからでしょう。
UNAIDS自身もただちにプレス声明を発表し、2段階の改革案を示しました。すでに進行中の第一段階では、事務局職員を55%削減し、2027年6月に公表予定の第2段階では「現行形態のUNAIDS事務局の最終的な閉鎖を視野に入れ、更なる改革を進める」ということです。第106号の繰り返しになりますが、「視野に入れ」という表現が目指す最終的な着地点はまだ見えていません。世界中のHIVとエイズの対策に取り組んできた多くの人たちにとっては「この先どうなるのか」という不安も大きく、同時にどこかはぐらかされたような宙ぶらりんの状況のもとで、UNAIDSは2025年の世界エイズデーを迎えました。
2. 『崩壊の危機を乗り越え エイズ対策の変革を』
UNAIDSが2025年世界エイズデーに向けて発表したテーマは『Overcoming disruption, transforming the AIDS response.』(崩壊の危機を乗り越え、エイズ対策の変革を)でした。11月25日には同名タイトルの報告書も公表されています。公式サイトの特設ページには、テーマの趣旨を説明した告知文が掲載され、報告書のPDF版もダウンロードできます。
告知文および報告書と同じ11月25日付のプレスリリースは、API-Netに日本語仮訳で紹介されているので、ご覧ください。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet093.html
プレスリリースには相当長い副見出しがついています。「このまま黙って落日を迎えるわけにはいかない」という感じでしょうか。日本語仮訳を引用しておきましょう。
《2025年の資金危機により、世界のエイズ対策は混乱に追い込まれ、HIV予防とコミュニティ主導のサービス、とりわけ最も弱い立場に置かれている人たちのためのサービスは大きな打撃を受けています。そうした中で国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新たに公表した報告書は回復力と投資、イノベーションが世界的な連帯を生み出し、エイズ終結に向けた道筋が残されていることを示しています》
3 113億4100万ドルの拠出誓約 南アフリカでグローバルファンド第8次増資サミット
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の第8次増資会合が11月21日、南アフリカのヨハネスブルグで開かれ、各国政府や民間ドナーから総額113億4100万ドル(約1兆7800億円)の拠出誓約がありました。
日本はこの会合では拠出の誓約額を明らかにしませんでしたが、4日後の11月25日に第8次増資に対し最大810億円(米ドル換算5.1億ドル)の拠出誓約を発表しています。今回は欧米の主要ドナー国も拠出削減の傾向が見られますが、日本は前回比52%減と他国と比べても際立って大きな減少率となっています。
グローバルファンドの増資会合は感染症対策に必要な資金を調達する目的で3年に一度、開かれています。今回は南アフリカとイギリスが議長国となり、増資対象期間は2027年~2029年の3年間です。ヨハネスブルグでは翌11月22日にG20サミットが開幕し、増資会合にも首脳クラスの政治家が多く出席していたことから増資サミットと呼ばれました。
前回の第7次増資期間(2024~2026年)の資金調達実績は約159億ドル(2025年11月現在)だったので、それには届いていませんが、会合時点では日本を含め誓約額を明らかにしなかった国も複数あり、開発援助資金が極端に削減される世界的な傾向の中では、まずまずの成果といえそうです。
2025年の大幅な国際援助資金削減の震源地ともいえる米国は46億ドルの拠出を誓約、前回比5.2%減ではありますが、ドナー国中最大の拠出誓約国の座は維持しています。
各国の拠出額などは、グローバルファンド日本委員会を運営する日本国際交流センター(JCIE)のウェブサイトに掲載されている報告『国際援助削減傾向下における感染症対策国際基金「グローバルファンド」の増資について』をご覧ください。
https://jcie.or.jp/report/global-issues/20251128.html
4 シミック賞にぷれいす東京の生島さん 日本エイズ学会
熊本市の熊本城ホールで開かれた第39回日本エイズ学会学術集会・総会2日目の12月6日、認定特定非営利活動法人ぷれいす東京の生島嗣さんが学会賞であるシミック賞を受賞しました。また、若手研究者を対象にしたECC山口メモリアルエイズ研究奨励賞は特定非営利活動法人aktaの岩橋恒太理事長に贈られました。コミュニティに基盤を置いて活動する組織(CBO)の代表2人がシミック賞と若手奨励賞を同じ年に受賞するのは初めてのことです。
TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)
第208号(2025年12月)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html で。
エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部
◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに UNAIDS 30年後の「落日」とは
2. 『崩壊の危機を乗り越え エイズ対策の変革を』
3 113億4100万ドルの拠出誓約 南アフリカでグローバルファンド第8次増資サミット
4 シミック賞にぷれいす東京の生島さん 日本エイズ学会
◇◆◇◆◇◆
1 はじめに UNAIDS 30年後の「落日」とは
12月1日の世界エイズデーは1988年に制定されました。厚労省のAPI-Net(エイズ予防情報ネット)は次のように説明しています。
《1988年にWHO(世界保健機関)が12月1日を“World AIDS Day”(世界エイズデー)と定め、エイズに関する啓発活動等の実施を提唱しました。その後1996年からUNAIDS(国連合同エイズ計画)もこの活動を継承しています。日本でもその趣旨に賛同し、エイズに関する正しい知識等についての啓発活動を推進し、エイズまん延防止及び患者・感染者に対する差別・偏見の解消等を図ることを目的として、12月1日を中心に「世界エイズデー」を実施しています》
1996年はUNAIDSが実質的な活動を開始した年です。複数の国連機関が共同スポンサーとして運営に関与する合同プログラムとして創設が認められた新しいタイプの国連機関でした。事務局の肥大化を避け、より多くの資金を実質的な活動に回すことを目指す組織形態です。
発足当時の共同スポンサーはWHOとUNDP(国連開発計画)、UNICEF(国連児童基金)、UNFPA(国連人口基金)、UNESCO(国連教育科学文化機関)に世界銀行を含めた6機関でした。その後もILO(国際労働機関)やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、UN Women(国連女性機関)などが加わり、現在は11機関がスポンサーとなっています。
保健分野だけでなく、開発、労働、教育、女性および子供の権利など幅広い分野の機関が加わっているのは、エイズのパンデミックが国際社会にもたらした影響がそれだけ深刻で重大なことを表している・・・はずでした。
そのUNAIDSがいま、創設から30年を経て、落日を迎えつつあると指摘されています。
10月のTOP HAT News第106号でも「UNAIDSはどう変わるのか」の見出しで紹介しましたが、今年秋にグテーレス国連事務総長が公表した国連80周年改革案の進捗状況に関する報告書では6項目の国連機関合併・統合案が示されました。その一つがUNAIDSのSunset(落日)です。
統合や合併ではなく、「落日」となっているのは、11もの機関による合同プログラムだからでしょう。
UNAIDS自身もただちにプレス声明を発表し、2段階の改革案を示しました。すでに進行中の第一段階では、事務局職員を55%削減し、2027年6月に公表予定の第2段階では「現行形態のUNAIDS事務局の最終的な閉鎖を視野に入れ、更なる改革を進める」ということです。第106号の繰り返しになりますが、「視野に入れ」という表現が目指す最終的な着地点はまだ見えていません。世界中のHIVとエイズの対策に取り組んできた多くの人たちにとっては「この先どうなるのか」という不安も大きく、同時にどこかはぐらかされたような宙ぶらりんの状況のもとで、UNAIDSは2025年の世界エイズデーを迎えました。
2. 『崩壊の危機を乗り越え エイズ対策の変革を』
UNAIDSが2025年世界エイズデーに向けて発表したテーマは『Overcoming disruption, transforming the AIDS response.』(崩壊の危機を乗り越え、エイズ対策の変革を)でした。11月25日には同名タイトルの報告書も公表されています。公式サイトの特設ページには、テーマの趣旨を説明した告知文が掲載され、報告書のPDF版もダウンロードできます。
告知文および報告書と同じ11月25日付のプレスリリースは、API-Netに日本語仮訳で紹介されているので、ご覧ください。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet093.html
プレスリリースには相当長い副見出しがついています。「このまま黙って落日を迎えるわけにはいかない」という感じでしょうか。日本語仮訳を引用しておきましょう。
《2025年の資金危機により、世界のエイズ対策は混乱に追い込まれ、HIV予防とコミュニティ主導のサービス、とりわけ最も弱い立場に置かれている人たちのためのサービスは大きな打撃を受けています。そうした中で国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新たに公表した報告書は回復力と投資、イノベーションが世界的な連帯を生み出し、エイズ終結に向けた道筋が残されていることを示しています》
3 113億4100万ドルの拠出誓約 南アフリカでグローバルファンド第8次増資サミット
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の第8次増資会合が11月21日、南アフリカのヨハネスブルグで開かれ、各国政府や民間ドナーから総額113億4100万ドル(約1兆7800億円)の拠出誓約がありました。
日本はこの会合では拠出の誓約額を明らかにしませんでしたが、4日後の11月25日に第8次増資に対し最大810億円(米ドル換算5.1億ドル)の拠出誓約を発表しています。今回は欧米の主要ドナー国も拠出削減の傾向が見られますが、日本は前回比52%減と他国と比べても際立って大きな減少率となっています。
グローバルファンドの増資会合は感染症対策に必要な資金を調達する目的で3年に一度、開かれています。今回は南アフリカとイギリスが議長国となり、増資対象期間は2027年~2029年の3年間です。ヨハネスブルグでは翌11月22日にG20サミットが開幕し、増資会合にも首脳クラスの政治家が多く出席していたことから増資サミットと呼ばれました。
前回の第7次増資期間(2024~2026年)の資金調達実績は約159億ドル(2025年11月現在)だったので、それには届いていませんが、会合時点では日本を含め誓約額を明らかにしなかった国も複数あり、開発援助資金が極端に削減される世界的な傾向の中では、まずまずの成果といえそうです。
2025年の大幅な国際援助資金削減の震源地ともいえる米国は46億ドルの拠出を誓約、前回比5.2%減ではありますが、ドナー国中最大の拠出誓約国の座は維持しています。
各国の拠出額などは、グローバルファンド日本委員会を運営する日本国際交流センター(JCIE)のウェブサイトに掲載されている報告『国際援助削減傾向下における感染症対策国際基金「グローバルファンド」の増資について』をご覧ください。
https://jcie.or.jp/report/global-issues/20251128.html
4 シミック賞にぷれいす東京の生島さん 日本エイズ学会
熊本市の熊本城ホールで開かれた第39回日本エイズ学会学術集会・総会2日目の12月6日、認定特定非営利活動法人ぷれいす東京の生島嗣さんが学会賞であるシミック賞を受賞しました。また、若手研究者を対象にしたECC山口メモリアルエイズ研究奨励賞は特定非営利活動法人aktaの岩橋恒太理事長に贈られました。コミュニティに基盤を置いて活動する組織(CBO)の代表2人がシミック賞と若手奨励賞を同じ年に受賞するのは初めてのことです。
この記事へのコメント