TOP-HAT News 第192号(2024年8月)
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TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)
第192号(2024年8月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html で。
エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部
◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 『今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ』 UNAIDS年次報告書
2 世界のHIV陽性者数は3990万人 UNAIDS最新推計から
3、名前の由来は「Drop in Station」、大阪のコミュニティセンターdista
4. 第14回AIDS文化フォーラムin京都 10月5、6日
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1 はじめに 『今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ』UNAIDS年次報告書
国連合同エイズ計画(UNAIDS)は7月22日、年次報告書 Global AIDS UPDATE 2024が発表しました。今年のタイトルは『The Urgency of Now: AIDS at a Crossroads(今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ)』です。
API-Net(エイズ予防情報ネット)のUNAIDS FACT SHEET欄に概要版(Executive Summary)とプレスリリースが日本語仮訳で紹介されています。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world/sheet2024_GLOBAL_AIDS_UPDATE.html
《報告書は2030年までにエイズを終結に導くことは可能だと強調したうえで『ただし、HIV対策に必要な資金を確保し、すべての人の人権が守られることを保障できた場合に限られる』と釘を刺しています。その進路を決定づけるのが今(2024年)であり、成否は政治の指導者たちの決断にかかっているということです》(API-Netから)
UNAIDSの年次報告書は毎年7月に発表されています。隔年で交互開催の国際エイズ会議(AIDS会議)とHIV科学会議(IAS会議)に先立って最新データを公開し、それぞれの会議がそのデータを軸に議論を進められるようにするためです。
2つの会議はUNAIDSとは別の団体である国際エイズ学会(IAS)の主催ですが、両者が緊密な連携を保ちながら世界のHIV対策を進めていく意識を持っていることは、データの共有を重視する姿勢からも分かります。
今年はミュンヘンで第25回国際エイズ会議(AIDS2024)が開かれ、その開幕当日である7月22日の、しかも開会式直前の時間帯に発表の会見が行われました。
実は世界のエイズ対策は何年も前から「岐路に立っている」と指摘されてきたので、報告書のタイトルに対しては、「狼が来るぞ」と言われているようで、「またか」と思わないこともありません。
ただし、「またか」「エイズはもういいんじゃないの」という意識が広がりつつあること自体も含め、いま言っておかなければという危機感は伝わってきます。
報告書は次のように指摘しています。
『指導者たちが十分で持続可能な資金を確保し、すべての人の人権を守るために必要な行動を今すぐ取れば、生涯にわたる治療が必要になるHIV陽性者の数は2050年までに約2900万人に減る見込みだが、進路を誤れば、生涯にわたる支援を必要とする人が4600万人(2023年は3990万人)に拡大することになる』
進路を誤る危惧もなしとはしません。
プレスリリースにはアジア・太平洋地域について、さらっと一行だけ『とりわけHIV陽性者数が2050年にはほぼ倍増すると予想されるアジア・太平洋地域』と紹介している部分もあります。あまりにも、さらっとしすぎて、かえって気になります。
2 世界のHIV陽性者数は3990万人 UNAIDS最新推計から
UNAIDSのプレスリリースの日本語仮訳では、2023年末時点で集約した統計も参考資料として見ることができます。紹介しておきましょう。
参考:HIV統計(世界全体、ファクトシートから)
・ 2023年現在の世界のHIV陽性者数 3990万人[3610万–4460万人]
・ 2023年の年間HIV新規感染者数 130万人[100万–170万人]
・ 2023年の年間エイズ関連死者数 63万人[50万–82万人]
・ 2023年現在抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者数 3070万人[2700万–3190万人]
・ 流行開始以来HIVに感染した人の数 8840万人[7130万–1億2800万人]
・ 流行開始以来エイズ関連の疾病で死亡した人の数 4230万人[3570万–5110万人]
2023年7月に発表されたファクトシート(2022年現在の推計)では、世界のHIV陽性者数は3900万人、年間新規HIV感染者数130万人、エイズ関連死者数は63万人でした。
新規感染者数も、エイズ関連の死者数も、推計値は前年と同数でした。全体のHIV陽性者数は90万人増えています。UNAIDSの統計は毎年、過去に遡って経年の推計値を出すので、そのまま前年に発表された数字との比較はできません。それでも、動向の把握は可能です。
拡大を抑えていること自体、大変な努力と工夫を重ね、治療の普及を進めてきた結果ではありますが、新規感染の予防には、期待していたほどの成果が上がっているわけではありません。繰り返しになっても岐路に立っていると言わざるを得ない状況が続いています。
3、名前の由来は「Drop in Station」、大阪のコミュニティセンターdista
HIV対策の啓発拠点となる全国6カ所のコミュニティセンターの中で、最初に開設されたのは大阪のdista(ディスタ)でした。
《厚生労働省の同性愛者等のHIVに関する相談・支援事業として、MASH大阪が2002年に運営をスタートしたコミュニティセンターです。dista(ディスタ)の名前は「Drop in Station」を略して作られました。堂山のなかにあって、だれもが「ふらっと気軽に立ち寄れる」ゲイコミュニティのスペースを目指しています》 (dista公式サイトから)
活動の詳細、所在地などは公式サイトでご覧ください。
https://www.dista.osaka/about/
4. 第14回AIDS文化フォーラムin京都 10月5、6日
真夏のAIDS文化フォーラムin横浜(8月2~4日)に続いて、秋には第14回AIDS文化フォーラムin京都が10月5日(土)、6日(日)の2日間、京都市伏見区の龍谷大学深草キャンパスで開かれます。
https://hiv-kyoto.com/
今年のテーマは「考えてみよう わたしとあなたの性と生」です。公式サイトからチラシPDF版もダウンロードできます。
AIDS文化フォーラムは、横浜で第10回国際エイズ会議が開催された1994年夏、同じ横浜市内で「市民のための市民のフォーラム」として第1回AIDS文化フォーラムin横浜が開催され、今年で第31回を迎えました。
横浜に続いて、京都では2011年10月1日(土)、2日(日)の2日間、「AIDSで知ろう、AIDSで学ぼう」をテーマに第1回AIDS文化フォーラムin京都が開かれ、以後毎年秋に開催されています。
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第192号(2024年8月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html で。
エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部
◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 『今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ』 UNAIDS年次報告書
2 世界のHIV陽性者数は3990万人 UNAIDS最新推計から
3、名前の由来は「Drop in Station」、大阪のコミュニティセンターdista
4. 第14回AIDS文化フォーラムin京都 10月5、6日
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1 はじめに 『今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ』UNAIDS年次報告書
国連合同エイズ計画(UNAIDS)は7月22日、年次報告書 Global AIDS UPDATE 2024が発表しました。今年のタイトルは『The Urgency of Now: AIDS at a Crossroads(今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ)』です。
API-Net(エイズ予防情報ネット)のUNAIDS FACT SHEET欄に概要版(Executive Summary)とプレスリリースが日本語仮訳で紹介されています。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world/sheet2024_GLOBAL_AIDS_UPDATE.html
《報告書は2030年までにエイズを終結に導くことは可能だと強調したうえで『ただし、HIV対策に必要な資金を確保し、すべての人の人権が守られることを保障できた場合に限られる』と釘を刺しています。その進路を決定づけるのが今(2024年)であり、成否は政治の指導者たちの決断にかかっているということです》(API-Netから)
UNAIDSの年次報告書は毎年7月に発表されています。隔年で交互開催の国際エイズ会議(AIDS会議)とHIV科学会議(IAS会議)に先立って最新データを公開し、それぞれの会議がそのデータを軸に議論を進められるようにするためです。
2つの会議はUNAIDSとは別の団体である国際エイズ学会(IAS)の主催ですが、両者が緊密な連携を保ちながら世界のHIV対策を進めていく意識を持っていることは、データの共有を重視する姿勢からも分かります。
今年はミュンヘンで第25回国際エイズ会議(AIDS2024)が開かれ、その開幕当日である7月22日の、しかも開会式直前の時間帯に発表の会見が行われました。
実は世界のエイズ対策は何年も前から「岐路に立っている」と指摘されてきたので、報告書のタイトルに対しては、「狼が来るぞ」と言われているようで、「またか」と思わないこともありません。
ただし、「またか」「エイズはもういいんじゃないの」という意識が広がりつつあること自体も含め、いま言っておかなければという危機感は伝わってきます。
報告書は次のように指摘しています。
『指導者たちが十分で持続可能な資金を確保し、すべての人の人権を守るために必要な行動を今すぐ取れば、生涯にわたる治療が必要になるHIV陽性者の数は2050年までに約2900万人に減る見込みだが、進路を誤れば、生涯にわたる支援を必要とする人が4600万人(2023年は3990万人)に拡大することになる』
進路を誤る危惧もなしとはしません。
プレスリリースにはアジア・太平洋地域について、さらっと一行だけ『とりわけHIV陽性者数が2050年にはほぼ倍増すると予想されるアジア・太平洋地域』と紹介している部分もあります。あまりにも、さらっとしすぎて、かえって気になります。
2 世界のHIV陽性者数は3990万人 UNAIDS最新推計から
UNAIDSのプレスリリースの日本語仮訳では、2023年末時点で集約した統計も参考資料として見ることができます。紹介しておきましょう。
参考:HIV統計(世界全体、ファクトシートから)
・ 2023年現在の世界のHIV陽性者数 3990万人[3610万–4460万人]
・ 2023年の年間HIV新規感染者数 130万人[100万–170万人]
・ 2023年の年間エイズ関連死者数 63万人[50万–82万人]
・ 2023年現在抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者数 3070万人[2700万–3190万人]
・ 流行開始以来HIVに感染した人の数 8840万人[7130万–1億2800万人]
・ 流行開始以来エイズ関連の疾病で死亡した人の数 4230万人[3570万–5110万人]
2023年7月に発表されたファクトシート(2022年現在の推計)では、世界のHIV陽性者数は3900万人、年間新規HIV感染者数130万人、エイズ関連死者数は63万人でした。
新規感染者数も、エイズ関連の死者数も、推計値は前年と同数でした。全体のHIV陽性者数は90万人増えています。UNAIDSの統計は毎年、過去に遡って経年の推計値を出すので、そのまま前年に発表された数字との比較はできません。それでも、動向の把握は可能です。
拡大を抑えていること自体、大変な努力と工夫を重ね、治療の普及を進めてきた結果ではありますが、新規感染の予防には、期待していたほどの成果が上がっているわけではありません。繰り返しになっても岐路に立っていると言わざるを得ない状況が続いています。
3、名前の由来は「Drop in Station」、大阪のコミュニティセンターdista
HIV対策の啓発拠点となる全国6カ所のコミュニティセンターの中で、最初に開設されたのは大阪のdista(ディスタ)でした。
《厚生労働省の同性愛者等のHIVに関する相談・支援事業として、MASH大阪が2002年に運営をスタートしたコミュニティセンターです。dista(ディスタ)の名前は「Drop in Station」を略して作られました。堂山のなかにあって、だれもが「ふらっと気軽に立ち寄れる」ゲイコミュニティのスペースを目指しています》 (dista公式サイトから)
活動の詳細、所在地などは公式サイトでご覧ください。
https://www.dista.osaka/about/
4. 第14回AIDS文化フォーラムin京都 10月5、6日
真夏のAIDS文化フォーラムin横浜(8月2~4日)に続いて、秋には第14回AIDS文化フォーラムin京都が10月5日(土)、6日(日)の2日間、京都市伏見区の龍谷大学深草キャンパスで開かれます。
https://hiv-kyoto.com/
今年のテーマは「考えてみよう わたしとあなたの性と生」です。公式サイトからチラシPDF版もダウンロードできます。
AIDS文化フォーラムは、横浜で第10回国際エイズ会議が開催された1994年夏、同じ横浜市内で「市民のための市民のフォーラム」として第1回AIDS文化フォーラムin横浜が開催され、今年で第31回を迎えました。
横浜に続いて、京都では2011年10月1日(土)、2日(日)の2日間、「AIDSで知ろう、AIDSで学ぼう」をテーマに第1回AIDS文化フォーラムin京都が開かれ、以後毎年秋に開催されています。
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