TOP-HAT News 第187号(2024年3月)

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TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)
        第187号(2024年3月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部


◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに UNAIDS差別ゼロデー10周年

2 これまで11回のテーマは?

3 『UPDATE いくつ知っている ?』情報更新版を作成

4 ぷれいす東京・エイズ&ソサエティ研究会議共催フォーラム『地域におけるHIV陽性者支援研究から』

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1 はじめに UNAIDS差別ゼロデー10周年
 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が提唱する『差別ゼロデー』が今年3月1日、10周年を迎えました。2014年3月1日が第1回なので、キャンペーンとしては11回目となる今年のテーマは『To protect everyone’s health, protect everyone’s rightsです。日本語に訳すと『みんなの健康を守るには、みんなの権利を守ろう』。テーマの趣旨説明もAPI-Net(エイズ予防情報ネット)に日本語仮訳で紹介されています。
 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet078.html
《すべての人の権利がまもられれば、エイズ終結は可能です。「公衆衛生上の脅威としてのエイズ終結」の2030年達成に向けて、世界は大きく前進してきました。人権をまもることでもたらされた成果です》
これは確かに世界のエイズ対策の大きな成果ではあるのですが、ただし・・・ということで趣旨説明は続きます。
《女性や少女、キーポピュレーションをはじめ、疎外されがちなコミュニティに対して、あえて懲罰を科し、差別し、スティグマを生み出すような法律や政策、慣行が存在し、それが人権を侵害してHIVの予防、検査、治療、ケアへのアクセスを妨げている現実もあります》
世界は一筋縄ではいきません。医学の進歩により、検査や治療の普及が進めば、流行は終わります・・・と言いたいところだけれど、どうもそういうわけではなさそうです。社会的課題の解決に取り組まない限り流行は終わらない。UNAIDSがスティグマや差別の解消を最重要対策課題として取り上げ、差別ゼロデーを創設したのもこのためでした。
12月1日の世界エイズデーと並び、3月1日は現在、世界のエイズ対策の重要なキャンペーンデーとして位置づけられています。
今年の差別ゼロデーはもう過ぎましたが、そもそも1日限りで終わるキャンペーンではありません。継続が大切です。この機会に創設の経緯を振り返ってみましょう。


2 これまで11回のテーマは?
 UNAIDSが3月1日を差別ゼロデーとしますという発表を行ったのは2013年12月1日、オーストラリアのメルボルンで開催された世界エイズデー記念式典の席上です。ミャンマーからアウンサウンスーチーさんが駆けつけ、当時のUNAIDS事務局長とともに「差別ゼロキャンペーン」の開始を宣言しました。
この年の世界エイズデーのポスターにはカラフルな蝶が舞い、アウンサウンスーチーさんは「すべての人が花開き、咲き誇る世界が訪れることを確信しています。どんな人であるかに関わりなく、尊厳ある生活を送ることができるよう、みんなで変化を生み出していきましょう」と呼びかけています。
3月1日を差別ゼロデーとすることは、この時のキャンペーン開始に合わせて明らかにされたのですが、いつまで続くのかも分からず、あまり注目度は高くなかったようです。記念日としての存在感が増したのは、10年間の蓄積と同時に、感染症の流行は医学だけでは対応しきれないことが時の経過とともに再確認されてきたためでしょう。
もちろん医学面における検査と治療の普及はパンデミック対策の重要なファクターではありますが、同時に社会的な課題に対する目配りも必要です。どちらが重要かということではなく、両方の相乗効果を高めていかなければならない。そのことの大切さが痛感されるようになったのは、コロナというもう一つのパンデミックを経験したことも影響しているかもしれません。参考までに過去10年(11回)のテーマを紹介しておきましょう。
   ◇
2014年 Join the transformation(一緒に変えていこう)
2015年 Open Up, reach out(広げよう 届けよう)
2016年 Stand out(立ち続けよう)
2017年 Make some noise(声を上げよう)
2018年 What if (あなたならどうしますか)
2019年 Act to change laws that discriminate(差別的な法律を変えよう)
2020年 Zero discrimination against women and girls(女性と少女への差別ゼロ)
2021年 End inequality(不平等の解消を)
2022年 Remove laws that harm, create laws that empower(有害な法律を取り除き、力になれる法律を作ろう)
2023年 Save lives: Decriminalise(非犯罪化が命を救う)
2024年 To protect everyone’s health, protect everyone’s rights(みんなの健康を守るには、みんなの権利を守ろう)
 API-Net(エイズ予防情報ネット)には11回のテーマがビジュアル入りで紹介されています。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world/pdf/1_march_is_zero-discrimination-day-jp.pdf


3 『UPDATE いくつ知っている ?』情報更新版を作成
《エイズ対策はなぜか略字と数字のオンパレード。U=U? PrEP? 95-95-95? それって何?》
 TOKYO AIDS WEEKSのサイトに紹介されている『UPDATE いくつ知っている ?』はこうした疑問にこたえる冊子およびウェブサイトです。
 https://aidsweeks.tokyo/update/
エイズの流行をめぐる日本の現状、および95-95-95、U=U、LIVING TOGETHER、COMBINATION PREVENTION、PrEP、HIV checkの7項目について最新情報を分かりやすく解説しています。もともとは、『東京レインボープライド2019で、コミュニティセンターaktaとぷれいす東京が運営する合同ブースのために作成したWebサイト』なのですが、さすがに5年が経過すると最新ではなくなってきたという事情もあり、内容を総点検して更新情報版にリニューアルしました。
 最も大きな変化は、ケアカスケードの国際的なターゲットである 90-90-90が、95-95-95に変わったことでしょうか。『検査→治療→継続 そのすべてを95%以上の人に』ということで、90%から95%へとハードルが一段階、上がりました。日本の現状はその95-95-95にも肉薄しようとしています。ただし、それでも流行が終わったわけではありません。
《対策の鍵となる人口集団や年齢別、地域別に感染の傾向を分析し、よりきめ細かな支援を続けることが大切です》
 サイトには英語版、中国語版もあります。


4  ぷれいす東京・エイズ&ソサエティ研究会議共催フォーラム『地域におけるHIV陽性者支援研究から』
 2008年から『地域におけるHIV陽性者支援』をテーマに続けられていた厚生労働科研の一連の研究が2023年度末で終止符を打ちました。長期にわたる研究成果の総括となるフォーラムが4月3日(水)午後6時から8時まで、東京・新宿2丁目のコミュニティセンターaktaで開催されます。
 Zoomも併用したハイブリッド開催なので、首都圏以外の方も参加可能です。ウェブ参加の申し込みも含め詳細は、ぷれいす東京のサイトでご覧ください。
 https://ptokyo.org/news/16648



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