ピープルファースト宣言(People First Charter)

(解説)第25回国際エイズ会議(AIDS2024)のテーマ『People first!』(人を第一に考えよう)の背景として「なぜこのテーマなのか」を説明する資料です。AIDS2024の公式サイトからアクセスできます。
 https://peoplefirstcharter.org/
『ピープルファースト宣言は2021年7月、ベルリンでIAS会議がバーチャル開催された際に発表されました。HIVとセクシュアルヘルスに関し、人を第一に考える言語の普及を目指しています』
 コロナ流行の影響でバーチャル開催になりましたが、2021年の第11回HIV科学会議(IAS2021)はベルリンが開催都市でした。その時に発表された宣言が、3年後に同じドイツのミュンヘンで開かれる国際エイズ会議に引き継がれる形になっています。
 以下宣言のサイトの日本語仮訳です。

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ピープルファースト宣言(People First Charter)
https://peoplefirstcharter.org/

宣言について

なぜ必要なのか
ピープルファースト宣言は2021年7月、ベルリンでIAS会議がバーチャル開催された際に発表されました。HIVとセクシュアルヘルスに関し、人を第一に考える言語の普及を目指しています。
言葉は重要です。HIV陽性者、HIV感染のリスクに曝されている人はスティグマと差別を経験しています。言葉が誤って使われると、そのスティグマと差別が永続してしまいます。

HIV分野には、スティグマを生むような非難を含む用語が溢れています。
・ HIV-infected person(HIV感染者)
・ Patients failing treatment(治療に失敗した患者)
・ Became infected(感染してしまった)
・ Serodiscordant(感染状態の不一致)

世界保健機関(WHO)はこう指摘しています。
「ポジティブで包摂的(インクルーシブ)な言語は、進歩と協力の新たな機会を生み出すものです。当面の問題解決にしか焦点を当てていないわけではありません」

私たちが使う言葉は目指すべきゴールに沿うものでなければなりません。基本的人権の一つとして、HIVや性感染症(STI)のリスクを抱えて生きるすべての人が、達成可能な最高水準の健康を享受できるようにすべきです。

どうすればいいのか
政策立案者や研究者、会議開催者、雑誌編集者、医療提供者には、用語ガイドラインおよび成功事例を示し、それに準拠することを求めています。
1. ガイダンスを作成し、継続的に更新する。
2. HIVと性感染症に関連する資料でピープルファーストの用語使用を呼びかける。
3. 科学論文の抄録や論文本体の査読者に対し、適切な用語の推奨を依頼する。
4. HIV/STIの研究およびケアに携わる個人・組織に宣言の承認を求める。

目標は医療、科学、その他のあらゆる分野で、適切な表現の普及を支援することです。

力になります
最終的には、すべてのコミュニティが望ましい言語を使うようになることを目指しています。ただし、その前段階として、自分たちが自らの領域で適切な用語を一貫して使えるようになる必要があります。 自分たちのフィールドから始め、そして世界へ!です。
ピープルファースト宣言への関与法を知り、適切な言葉を適切なかたちで使えるようにご協力ください。
ガイダンスの翻訳が可能ならご連絡ください。
ピープルファーストではない言葉を見たり聞いたりした場合は、ピープルファーストの用語があることを(やさしく丁寧に)教え、使用を奨励してください。 間違えることは誰にでもあります。変化の定着には時間がかかるものです。
母国語以外の言語でプレゼンテーションや出版を行う際の課題もあります。この点にも目配りが必要です。

どんな言葉なのでしょうか
 パーソンファーストの言葉
パーソンファーストの言葉は、その人の状態よりも人そのものを優先する言葉です。人は人であり、状態によって定義されるものではないとの認識に基づくものです。 HIVケアに関して言えば、「HIV感染者」といった用語は避け、「HIVとともに生きる人」を使うべきです。
他にもパーソンファーストの言葉を使うことがあります。例えば、
diabetic person(糖尿病の人)ではなく、「person with diabetes(糖尿病を抱える人)」
obese person(肥満の人)ではなく「person with obesity(肥満を抱える人)」

アイデンティティが優先する場合もあります(下記参照)。
アイデンティティファーストの言葉
パーソンズファーストの言葉はある状態から人を切り離すことにるため、それは不可能または不適切であると感じるコミュニティもあります。
たとえば、聴覚障害者のコミュニティでは、多くの人が聴覚障害を自らのアイデンティティの一部と考えています。自閉症者の多くも同様です。アイデンティティファーストの言葉には「人」が含まれることが多く、依然として人を中心にしていると言えます。


どちらが正しいのでしょうか
決められたルールはありません。何を「正しい」とみなすのかは、それぞれの状態や時間の経過によって異なり、人によっても様々です。
それぞれの状態や特徴を持つコミュニティがどう説明されることを望むのか。この点を当事者に尋ね、定期的に再検討していくことが大切です。
常に正しいというわけではありません。ただし、推奨される用語に関し開かれた議論を重ねることで、理解が増し、変化が促されることになります。

用語ガイダンス PDF(英文)
People first charter language v3 19042022.pdf (wsimg.com)

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