TOP-HAT News 第165 号(2022年5月)
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TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)
第165 号(2022年5月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部
◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 『不平等に終止符を打ち、2030年エイズ終結の軌道に』(国連総会政治宣言)
2 「HIV検査普及週間」特設ページ
3 中村キースへリング美術館開館15周年記念展
4 一般演題を募集 第36回日本エイズ学会学術集会・総会
5 上映作品は6月中旬に公表予定 レインボー・リール東京
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1 はじめに 『不平等に終止符を打ち、2030年エイズ終結の軌道に』(国連総会政治宣言)
2025年までの世界のエイズ対策の指針となる『HIVとエイズに関する2021年国連総会政治宣言』は昨年6月18日、国連総会ハイレベル会合で採択されました。ほぼ1年前のことです。それ以前もそれ以後も、世界は試練続きですが、だからと言って忘れていい宣言ではありません。世界のエイズ対策は、この宣言で各国が合意したコミットメント(約束)に沿って進められることになります。
長文の宣言を英語で読むのは不可能とは言えないまでも極めて困難ではあります。日本語に訳してコンパクトに紹介できる資料がないか。そう思って探していたら国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに今年2月23日付で、『不平等に終止符を打ち、2030年エイズ終結の軌道に(Ending inequalities and getting on track to end AIDS by 2030)』という冊子が公表されました。副題は『HIVとエイズに関する2021年国連総会政治宣言の約束とターゲット要約版』。公益財団法人エイズ予防財団が作成した日本語仮訳がPDFでAPI-Net(エイズ予防情報ネット)に掲載されています。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet060.html
そのAPI-Netの紹介文によると、この冊子は国連総会の採択文書をテーマ別に整理し、各テーマの核心部分を抜き書きしてまとめられています。とはいえ、国連の採択文書は事前に様々なレベルの会合を積み重ね、政治的な駆け引きや妥協の結果として成立している面もあり、一筋縄ではいきません。一つの文章がやたらと長くなり、曲がりくねったように分かりにくい部分が多いのは、おそらくそのためでしょう。
概括的に内容を把握するには、2ページ目に載っている『主なコミットメントと2025年ターゲット』、および4ページ目の『コンビネーション予防を読み解く』という2つの一覧表が参考になるかもしれません。
2ページの表では、戦略的優先課題として以下の3点が示されています。
・ 公平で平等なHIVサービスの実現
・ HIV対策の成果を妨げる障壁の打破
・ 効率的で統合されたHIV対策を維持するための資金の確保
具体的にどういうことなの? やっぱり、ちょっと分かりにくいかもしれませんね。
4ページの表は、これまでもたびたび重要性が指摘されてきたコンビネーション予防について改めて説明しています。前回(2016年)の政治宣言でも言及されてはいましたが、ケアカスケードの90-90-90ターゲットの影に隠れてあまり目立たない印象でした。治療が普及すれば、他の予防策は必要ない。どこかにそんな誤解があったのかもしれません。
2020年が達成目標年だった90-90-90ターゲットは、
・ HIV陽性者の90%が検査で自らの感染を知り、
・ その90%が抗レトロウイルス治療を開始し、
・ さらにその90%が治療を続けて体内のHIV量を低く抑えた状態に維持する
という三段構えのターゲットで、HIV治療の成果を予防に生かそうという考え方です。
治療の普及がもたらす予防効果の重視はもちろん大切です。だからこそ世界各国が90-90-90に取り組み、多くの国がかなり健闘しています。それでも世界全体としてみれば、達成には至らずに終わっています。
その目標(ターゲット)は95-95-95にハードルを上げ、2021年政治宣言でも残されています。ただし、それがすべてではありません。
検査や治療の普及は数値目標を掲げれば実現するものではない。このことも苦い体験とともに明らかになっています。『不平等に終止符を打ち、2030年エイズ終結の軌道に』というタイトルが示しているように、医療分野の成果だけでなく、混沌とした世界の現実の中でターゲットの達成に不可欠な社会的要因(ソーシャルイネーブラー)に目を向けることの重要性を改めて強調しているのも新たな宣言の特徴です。
2 「HIV検査普及週間」特設ページ
6月の最初の1週間(1~7日)は厚労省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する「HIV検査普及週間」です。API-Net(エイズ予防情報ネット)の特設ページによると、HIV検査の浸透・普及を図ることを目的に平成18年度に創設されました。
https://api-net.jfap.or.jp/
特設ページには実施要項や検査に関する情報サイト、HIVやエイズについての基礎知識を得られる動画サイト、啓発資材、Q&Aなどが掲載されています。
3 中村キースへリング美術館開館15周年記念展
ニューヨークで活躍したポップアートの巨人であり、エイズアクティビストでもあったキース・へリングの作品を紹介する中村キース・へリング美術館(山梨県北杜市小淵沢町)が開館15周年を迎え、5月14日から記念展『混沌と希望』が開かれています。
https://www.nakamura-haring.com/exhibition/
開催期間は2023年5月7日までのほぼ1年間です。
キース・ヘリング(1958-1990)は、1988年にHIV感染の診断を受け、その2年後に31歳で亡くなりました。『IGNORANCE=FEAR / SILENCE=DEATH(偏見は恐怖 / 沈黙は死)』というACT UPのポスターを作るなどエイズ啓発活動にも積極的に参加し、いまも大きな影響力を残しています。
中村キースへリング美術館は2007年にキース・へリングを紹介するための専門の美術館として開館。15周年記念展にはコレクションの核となる作品約150点が展示されます。
4 一般演題を募集 第36回日本エイズ学会学術集会・総会
『Resistance ~耐性との闘い/差別との闘い』をテーマにした第36回日本エイズ学会学術集会・総会が一般演題を募集しています。
募集期間:2022年5月10日(火)正午~6月30日(木)正午。
応募資格は、発表者が原則として日本エイズ学会会員であること。
詳細は公式サイトをご覧ください。
http://aids36.umin.jp/abstract.html
学術集会・総会の会期は2022年11月18日(金)~20日(日)、会場はアクトシティ浜松(静岡県浜松市)の予定です。
5 上映作品は6月中旬に公表予定 レインボー・リール東京
第30回 レインボー・リール東京 〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜が7月に東京・大阪の3会場で開かれます。第1回は1992年でした。
『当映画祭は、レズビアンやゲイについての作品に留まらず、トランスジェンダー、インターセクシュアル、バイセクシュアルといった、さまざまなセクシュアル・マイノリティについての作品上映を通じて、 より多様で自由な社会を創出する場となることを目指すとともに、セクシュアル・マイノリティをテーマとする作品は劇場公開される機会が少ないことから、そうした国内外の作品を紹介することで映像文化創造に貢献することも趣旨としています』(公式サイトから)
開催期間と会場は次の通りです。
・2022年7月 8日(金)〜14日(木) @シネマート新宿
・2022年7月15日(金)〜21日(木) @シネマート心斎橋
・2022年7月16日(土)〜18日(月・祝) @スパイラルホール(スパイラル3F)
上映作品は6月中旬に公表される予定です。
詳細は公式サイトでご確認ください。
https://rainbowreeltokyo.com/2022/
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